第9回『建築と仏像のさまよい紀行』 

願成寺白水阿弥陀堂(国宝)

所在地  福島県いわき市

建物概要 桁行三間・梁間三間・とち葺き宝形造り

建立時期 1160年(永暦元年)創建 平安時代

■ 第9回  2016.04.12UP
前景
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隅の組み物
斗の詳細
塩屋崎灯台より発電所側を望む
宮城県角田市高蔵寺阿弥陀堂
出組
岩手県平泉町中尊寺金色堂
兵庫県小野市浄土寺浄土堂
出隅
珍しいとち葺き

 以前、東北には国宝建築物が5物件ありますと書きましたが、願成寺白水阿弥陀堂がその中の1棟です。
 東北に残る平安時代の建造物は、中尊寺金色堂・高蔵寺阿弥陀堂、そして白水阿弥陀堂の3棟のみす。そのすべてが奥州藤原に関連した阿弥陀堂で、東北における藤原文化の強い影響をあらためて感じます。
 本建物は平安時代の末期に、清衡の娘徳姫によって創建されたものです。白水の名前のいわれは、平泉の泉を上下分割してつけられたとされています。
 写真で見ていただくとわかるように、反り返った屋根は、木材を厚く裂いた「とち葺き」でできており、端整で美しい勾配は、まさに平安時代末期の浄土建築を表現しています。
 庭園も当時の様子に復元され、毛越寺を彷彿させる浄土式庭園になっており、置石には、大きな亀がのんびりと日なたぼっこをしていました。

 高蔵寺は、極太の丸太の上にシンプルな舟肘木が重量感のある茅葺支える形になっていましたが、白水阿弥陀堂は、軽快な板葺きに非常に細かいピッチの二重垂木で構成されています。また柱の頂部は大斗が載り二先の組み物で深い軒を支えます。

 堂内に入ると、折上の格天井になっており、内陣を囲む円柱は太く規則的に打込まれた鋲が格式の高さを感じます。さらに、その柱や板壁長押には、飛天や唐草模様の彩色画が残り、優雅な極楽浄土が偲ばれます。
 この形式は、高蔵寺阿弥陀堂とは違い、平泉から遠く離れた場所にありながら、きわめて金色堂の形式に近いようです。

 仏像は、中央に阿弥陀如来、左右に勢至・観音菩薩。そして前列には、金色堂と同様に持国天・多聞天(寺伝増長天)が配されています。
 いずれも平安時代末期の素敵な仏像です。特に前面の二天増は、腰周りが細く、腰を振るように大きくひねった姿が印象的です。それぞれの邪鬼も良い感じで踏まれています。とってもかわいいのでお忘れなく。振り上げた腕から伸びる袖口は少し重めに感じます。また、これらの仏像は金色堂の中央壇の形に似ています。

 藤原秀衡の妻によって建立された高蔵寺、清衡の娘によって建立された願成寺。いずれの建物も女性がかかわっていましたが、建設場所の地形や庭の計画、そして建物の構造は大きく違います。比べながら観ると興味深いものがあります。

 帰りに、いわき市の海岸にある塩屋崎灯台に行きました。海がとても綺麗でした。地震で壊れた被災写真や、津波の様子が展示されていました。
 はるか北に見える火力発電所の先には、いまだに収束できない事故現場があります。
 多くの被災された方が、いわき市に避難しています。白水阿弥陀堂の阿弥陀様が優しく守ってくれて、ふるさとに戻れることを心よりお祈りいたします。
中央付近の組み物
東面
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隅垂木
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南東側